農業作業息吹/第84号 | 人と農・自然をつなぐ会





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第84号 2010年7月

村が消える悲しみ

私が農業で生きていくことを決め7年が経つ。時々、「若くて、しかも女性で農業やるのは大変でしょうね」と言う方がいるけれど、当の本人は農作業が大変だと思ったことはない。むしろ毎日が楽しくてたまらないくらいに農業が好きだ。「一番大変な作業は何ですか?」と聞かれて「う~ん」と悩んでしまうくらい。どの仕事も作物を作り上げる大きなサイクルの中の大切な要素であり、その全体像が見えているからこそ遣り甲斐がある。自分の日々の仕事のひとつひとつが土を豊かにし、茶木が力強く大地に根を張り大空に向かって新芽を伸ばすという実感は、疲労感も夏の暑さも冬の寒さも吹き飛ばしてしまう。

 唯一、農業をしていて最も辛いことがある。それは自分が生まれ育ち、これから生きていこうと決心した村が消えていこうとする姿を日々目撃することだ。心の深いところをえぐられるようなこの悲しみと焦りは到底言葉では言い表せない。新茶の収穫が終わる5月下旬頃になると数件の農家が我が家にやって来て、彼らの茶畑を引き継いで欲しいと言う。どの農家も7080歳代の高齢でこれまで必死に守ってきた農地もそろそろ限界にきているという。後継者もなく、先祖から受け継ぎ丹精してきた農地を荒らす悔しさを想うと胸が締め付けられる。かといって我家で管理できる茶園面積も限られていて、むやみに全ての茶園を引き受けるわけにもいかず...。年々ものすごいスピードで山が荒れ、耕作放棄地が増え、村から若者や子どもが消えている。農家の高齢化も深刻で、平均年齢は65歳以上で、7080歳代の農家が多い。2040歳代は指で数えるほどしかいない。10年先どころか5年先すら見えないのが村の現状。

 村が消えるということは、農地が荒れるだけではない。その地域の自然と密接に結びつき長い歴史の中で培われ、受け継がれてきた特有の伝統文化も失われてしまう。国産農作物の生産が減少すれば、更に多くの輸入農産物が私たちの胃の中に運び込まれ、日本人は身も心も農村の田畑のように荒れてしまうのではないか。

 このような現状は、私の村に限られたことではない。それは日本全国の村に共通する問題であり、日本だけでなく海外の農村でも起こっている。世界中で百姓が百姓として生きていけなくなっている。その主要な原因は農産物価格にある。多くの農家が農産物を市場や中間業者へ出荷しているが、農家が価格の決定権を持たない為、農産物は買い叩かれ、規模の大小に関わらず農業で暮らしを維持できなくなっている。その一方で、農産物は農家の手取り価格の数倍の値段が付いて店頭に並べられる。このような流通システムの矛盾と歪みが農村の荒廃を加速させている現実を理解することが、問題解決の第一歩だと考えている。

 村が消えようとする中で私たちに何が出来るか。その答えを見つけようと悩み続けてはいるものの、少しずつ方向が見えてきたように感じる。大切なことは繋がること。農村・農業の維持は農家だけの問題ではない。農作物を食べる消費者と直接結びつき問題を共有する必要がある。多くの場合、農村の問題は農村に留まり、都市部の消費者には伝わらない為、農村がどんな危機に直面しているのかが理解されずにいる。「食べる」という行為でどんな村が、どんな人々がその向こうにいるのか情報発信することで、多くの人々に知り理解してもらいたい。

 数年前から地域の若者を集めて無農薬での米づくりを始めた。今年も6月上旬の田植えに60人もの若者が集まり、静かな里山に黄色い声が響き渡った。その声や笑顔は心の中の不安を消してしまうほどの力がある。まだまだ道は長いけれど、仲間がいれば困難も希望に変えていくことができると私は信じている。

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無農薬茶メニュー.png無農薬紅茶メニュー.png無農薬みかんメニュー.png無農薬味噌メニュー.png小麦メニュー.png

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