農業作業息吹/第87号 | 人と農・自然をつなぐ会





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第87号 2010年10月

茶畑からの景色

夏から秋への移ろい。私たち百姓は日頃の農作業の中でそのうつろいを肌で感じながら知る。季節の変化は大きな流れのようでいて、実はその中に小さな変化、生命の営みがたくさん散りばめられている。茶の木は白い小さな花を咲かせ始め、柔らかな太陽の日差しの中でほのかに甘く香る。茶の木の上では春には1cmにも満たなかったカマキリが10cmほどにも成長し産卵前の大きなお腹を重そうに抱えながら動き回る。どこからともなく風に運ばれてくる山萩の懐かしい香り、一斉に咲き出す彼岸花、金色に輝く稲、モズの高い鳴き声、数え上げればきりがないほど。夏の日照りや天候不順、温暖化が心配される中でも、自然界の生命はしたたかに秋を体いっぱいに表現している。一つ一つの異なる生命体が季節の変化に敏感に反応し、季節という大きな調和を織りなす。なんと不思議で感動的なことだろう。
9月下旬から秋番茶の収穫が始まった。ズボンからも秋の訪れを感じる。それは秋になると重い朝露が茶木からなかなか切れず、茶畑に足を踏み入れるだけでズボンから靴までびしょ濡れになる。だから秋の朝は晴れた日でも長靴に雨合羽ズボンという重装備で作業を始める。
今年は夏の日照りは野菜や果樹に被害をもたらしたように、茶も例外ではなく、茶の芽の伸びが悪く収量も例年よりもだいぶ少ない。いつもは畝をひと通りも歩けば、袋が収穫した茶葉でずっしりと重くなるはずが、2倍歩かなければ重くならない。茶刈りをしていると、突然の機械の音に驚いた生き物たちがゴソゴソと茶葉の間を動き回り逃げていく。クモやカマキリ、トカゲにバッタ、名前も知らない大小さまざまな虫が茶畑を棲みかとしていることを改めて実感する。無農薬だと害虫の被害を心配する声を時々耳にするが、私たちの茶畑を歩いてみれば、農薬を散布しなくても、害虫の被害が殆どない理由を目撃する。春先に1cm未満だったカマキリがこの半年で10cmほどに成長するためにはどれだけの虫を捕食したのだろう。茶畑全体にどれだけ沢山のカマキリが生息するかを想像すれば納得がいくと思う。農薬は散布した直後は害虫の数が激減する。ただ、農薬散布で害虫を捕食する益虫まで全ての生物を殺してしまうため、しばらくして害虫が再び発生すると再度農薬を撒くというサイクルを繰り返す。これと比較して無農薬茶園では農薬を散布しない為、茶畑は多種の生物の棲みかとなる。害虫もいるが、それを捕食する益虫も共存し、常に害虫の大発生を防ぐ自然の抑制システムが出来上がっている。人間はこのシステムの妨げにならないように、出来るだけ自然に近い環境に茶畑と土を作ることのみ。だから私たちの茶づくりは人間だけでなく、茶畑を取り囲む自然環境と生物多様性があればこそ実現する。近年の農業は化学肥料や農薬、生産性ばかりに気を取られ、農業にとっての本質を忘れているように感じることが多々ある。
収穫の手を止めて、木陰でひと休みをする。目の前には山々が連なり、山の斜面の所々に茶畑が点在する。秋の収穫の時期だというのに、山は静まり返っている。遠くのほうで茶刈り機の音が小さく聞こえるだけ。向こうの山の茶畑をみると新たに耕作放棄された茶園が増えていることに気づく。今日、茶刈りをしている隣の茶畑も今年から放棄され、すでに茶樹は人間の背丈よりも高くボサボサと伸びている。自らの農地を持てる喜びと夢を胸にひと鍬ひと鍬先人達が開墾した茶畑は半年としない短時間で荒れてしまう。山間地で採れる茶葉は香りや味も良いが、非効率で最近の市場価格暴落の中で生き残れない。7080歳代の高齢の農家が自分の年金を注ぎ込みながら農地を守っているのが現状。私たち若い世代がどうすべきか。そのことばかり考えている。美しい農村や山々の景色を守り、後世に残していくためには。苦しい模索はこれからも続くだろう。就農して7年、模索の中からも少しずつ地域内で人と人との繋がりが出来つつある。想いを共有する仲間をもっと増やしていくことで、希望を見出していけたらと思う。

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無農薬茶メニュー.png無農薬紅茶メニュー.png無農薬みかんメニュー.png無農薬味噌メニュー.png小麦メニュー.png

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