農業作業息吹/第88号 | 人と農・自然をつなぐ会





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第88号 2010年11月

猟師の顔

11月からイノシシ猟の解禁となった。私の住む山間地はここ数年イノシシの被害が深刻で、米、豆、芋、野菜、みかん、筍などありとあらゆるものが食い荒される。茶畑にも入り土を掘り起こしミミズを食べる。茶木がまだ小さい幼木園では根元を掘られて苗を駄目にされてしまうため電気柵をまわりに張り巡らす。特に我が家の畑は他の畑よりもイノシシが頻繁に出没する。土中のミミズを食べにくるイノシシの出没は土の豊かさの象徴でもある。とはいっても、丹精した畑が荒らされた時の落胆とやり切れない思いは言葉にならない。そこで数年前から猟師のおじさんに頼んで3か所の茶畑に罠を仕掛けてもらい、毎年5匹ほど罠で捕まえる。解禁から数日後、今年の一匹目が罠にかかった。鉄製の檻の中に米糠を置き、その中にイノシシが入ると入口が閉まる仕組みの罠だ。檻の中には50kgほどの中ぐらいのイノシシが入っていた。檻に何度も体当たりして必死に逃げようとする姿を見ると可哀想だが、ここで逃がすわけにはいかない。
翌朝、猟師のおじさんが鉄砲でイノシシを撃った。何度見ても心臓がドキッとする瞬間。さっきまで生きていたイノシシから徐々に生命の光が消えていく。ほんの数十秒の出来事がとても長く感じる。鉄砲撃ちのおじさん、父、弟、そして私も、そこに立ち会う人々は皆、命の最期を目の前に、猟師の顔になる。
息絶えたイノシシをトラックに積み、川で水洗いする。宿を無くした大きなダニがボロボロと落ち水に流れていく。血抜きをした後は、手早く皮を剥ぐ。早速、血と死の臭いを嗅ぎつけたハエが集まってくる。油断すると卵を産みつけられ肉が台無しになってしまう。猟師のおじさんの手際の良さには負けるが、回数を重ねるごとに弟も父も包丁づかいが上手くなっている。その横では犬が肉のおこぼれを期待して真剣な表情で作業を見つめる。切り分けた肉の半分はお礼として猟師のおじさんに、残りの半分は一部は冷凍し、残りは近所やお世話になっている人たちに、皮や頭部は犬にといった具合に配る。醤油で濃く味付けして煮込んだ肉で炊く猪飯は格別な味で、畑を荒らされた腹立たしさも猪飯の美味しさの前では忘れ去ってしまう。
猟師の顔、それは生命に真っ直ぐに向き合う眼差し。自らの手で命を奪い、自らの命を維持する糧とする。私たち人間はいつから食べることと生きることを切り離してしまったのだろう。食べることは他の生き物の命をいただくこと。野菜にしても、米や魚、肉、すべてがもとは生命を宿し全力で生きていた。その生命を奪い、体内に取り込むことで私たちは命を繋いでいる。強烈なまでの命の生臭さを感じることは自らの命にも向き合うことであると感じた。その中で、自分だけでなく他者や他の生き物を敬う気持ちが生まれてくる。
イラクから帰還した元米軍兵士が帰国してから精神障害、薬物やアルコールへの依存などの問題を抱えることをよく耳にする。最近読んだジャーナルには帰還兵の暴力的テレビゲームへの異常な熱狂が取り上げられていた。狩猟の世界では自分の命を繋ぐ為の「殺す」という行為が、生命維持とは全く関係のない場で行われ、その言葉にならない矛盾と葛藤によって人は人間性を失ってしまうのかもしれない。それは米軍帰還兵や遠い国の出来ごとだけではない。私たち人間は今一度立ち止まって、命と向き合う必要がある。それは難しいことではない。日々の食の中でいかに命を意識していくのか、それをどう体現できるのかが大きな課題だと感じる。百姓として何が出来るのか秋空の下、考える。

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