農業作業息吹/ 100号 | 人と農・自然をつなぐ会





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第100号 2011年12月・2012年1月合併号

百姓であれ

 秋の番茶収穫が終わり、来年の新茶のための施肥と刈均し作業も終えると、茶畑の作業はひと段落する。噴き出すように自然界の生命力漲る春から夏とは対照的に、秋から冬にかけて自然は少しずつ息を潜めるように静まり返る。さあ、これからが百姓の腕のみせどころ。これまで忙しくて手が回らなかったことに打ち込める、冬は百姓にとって創作の季節だ。
 玉ねぎの苗を植え付け、柿を干し、大豆を乾かし、ミカンを収穫し、大根を洗って天日に干し沢庵漬けの準備もこの時期。そして稲刈りの終わった田んぼを耕し、小麦を蒔く準備をする。今年は近所の休耕田をもう一枚借りることができ、そこにも小麦を蒔く。といっても、数年間耕作されていなかった田は雑草が生い茂り、土もコチコチに固くなっている。まず、草刈りをし、草が乾燥した頃に枯れ草を燃やす。この時、ちょうど農作業の手伝いに3人の若者が東京、イギリス、リトアニアから来ていたので、大助かり。山積みになった枯れ草は表面は乾いていても内側はまだ湿っていて、なかなか思うように燃えない。はじめは皆、悪戦苦闘を繰り返すうちに徐々に要領をつかみ、濛々と立ち昇る白い煙の中を無心になって火と向き合う。火と向き合うことは、自分の中の火と向き合っているように感じたのは私だけだろうか。自分の思い通りにならない火と何とか折り合いをつけながら、少しずつ火を大きくし草を燃やしていく。自然という圧倒的な存在の中で、自らを溶け込ませ調和し生きてきた日本人の自然に対する姿勢がそこにあるように感じた。最近は焚火が制限され、ガスコンロの火しか見なくなっているのは何とも寂しい。
 耕作一年目の土はまだまだ固く、良い作物が作れることはしばらく望めない。これからゆっくり時間をかけ有機物を入れながら土作りをしていこうと思う。今はまだ固い土も一年、また一年と時を重ねていくことで少しずつ変わっていく。時の流れはとてもゆっくりだけれど、とても着実で正直。過去や現在の積み重ねが未来になる。手を掛ければ、掛けただけ応えてくれる。
私が就農して以来、毎月書き続けてきた息吹は今月で100号になる。大地と共に呼吸し、大地に生きる百姓であればこそ発することのできる言葉があると思う。残念ながら大地に根付いた豊かな声の多くは発せられることなく、百姓と共に消えていく。生命が放射能で汚染され、競争と効率を求める社会の中で人間が人間らしさを失い、自然を無視した開発と破壊が繰り返され地球が悲鳴を上げている。どんなに下手な言葉でも良い、今こそ私たち百姓はもっと発信しなければならない。人間には植物のような根っこは無いが、目に見えない根っこはある。その土地の水を飲み、旬のものを食べ、深く呼吸し、太陽の光を浴び、大地を耕す。知らず知らずのうちに自然の循環の一部になっている、大地に根付いた百姓だからこそ発せられる言葉が今の日本には必要だと強く感じる。
就農当時から私の心の根底にあるもの、それは「百姓であれ」という、ある仲間からいただいた大切な言葉。百姓であるということ、百姓である自分に何ができるか、そして今何をすべきか...この間ずっと自身に問いかけながら農業を続けてきた。まだまだ未熟者だが、自然と向き合い、様々な事を学び、大地を耕していく中でいくつか見えてきたことがある。百姓は「百」という数字に象徴されるように、多くの繋がりの中で生きている。実際に、この間、消費者の方々、学生、若い仲間たち、農家仲間、海外からも大勢訪問者があり、田畑を舞台に様々な繋がりが生まれ、その中で多くの刺激を頂いた。自然の中に身を置くことで、人間がこんなにも輝き、眩しいほどの笑顔を見せることも知った。それは一筋の確かな光だと思う。また、大地を耕す中で自然との繋がりを感じ、自らもその循環の中にあることに気付かされる。食べるという行為が大地と直接結び付き、私たちの生命をつなぎ維持していることをもっと理解してもらえるような農業をしていきたいと思う。 百の作物をつくり、百の繋がりの中、百の生命を守っていく。そんな多様性が地域特有の豊かな文化を織りなすことを知った。
 今年は大震災と原発事故、そしてTPPと日本は大きな岐路に立っている。経済中心の考え方がこれまでの歪みを作り出してきた。その歪みを正し、生命が輝く社会を再構築するうえでも、大地から生まれる百姓の声と哲学をもっと発信していきたい。

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無農薬茶メニュー.png無農薬紅茶メニュー.png無農薬みかんメニュー.png無農薬味噌メニュー.png小麦メニュー.png

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今年も紅茶を
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葉の下で
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