農業作業息吹/ 108号 | 人と農・自然をつなぐ会





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第108号 2012年9月号

生きる場所


 蛙の大合唱がいつの間にかコオロギや鈴虫の涼しげな鳴き声に変わっているこの頃、茶畑でも様々な生き物がそれぞれに生命をつないでいる。朝露に光る巣の中でクモの子たちが孵化、脱皮した後の抜け殻が無数、晩夏の風に揺れていた。1ミリにも満たないようなクモの子が茶畑に散り、あちこちで虫を捕まえ、成虫になるまでにどれだけの虫が食べられるのだろう。
 これまで農薬が使われていた茶畑を無農薬に切り替える際に、面白い変化がある。「農薬を散布しなければ、ダニやウンカなどの害虫を捕食するクモも増えて、クモの巣が増えるのでは?」と思われるかもしれないが、実はクモの巣は年を経るごと徐々に減っていく。クモには網を張る造網性と、網を張らない徘徊性がある。これまで農薬を散布していた茶園は生態系のバランスが崩れ、農薬散布を止めた直後は害虫が多く発生する。クモは網を張って獲物が引っかかるのを待っていれば良いため造網性が多い。ところが農薬散布を止めた畑には多種多様な生き物が戻り、クモは網を張って待っているだけでは十分な餌が得られなくなり、自分の足で歩き回って獲物を捕える徘徊性が多くなる。人間のちょっとした行為が、私たちの気付かないところで生態系に及ぼす影響は大きい。畑や里山は人間が生産し暮らすだけでなく、大小さまざまな生き物の生きる場所でもある。
 2011年の原発事故と大量に撒き散らされた放射能により、これまで大切に育ててきた茶や畑が一瞬にして汚染され、私はこれから何を信じて農業を続けていったら良いのか分からなくなった時期があった。そんな暗澹たる気持ちの中にあった私に大切なものを気付かせてくれたのは、畑で出会う生き物たちだった。これまで見過ごしてきた様々な生き物たちが茶畑には暮らしている。農薬を散布せずとも、生態系のバランスのとれた畑では害虫は自然と抑制される。生き物たちの大きな命の循環の中に私たち人間があり、農業があるということ。有機農業は作物を作るだけでなく、そこに生きる様々な命と共存している調和の姿だと思う。これまで大切にしてきたものを再認識する機会となった。
取り返しのつかない原発事故と汚染、津波による破壊という混乱の中、莫大な電気を必要とする野菜工場の建設が津波で塩害を受けた被災地で進められていると聞く。農業とはただ農作物を生産することではないように、食べるという行為もただカロリーを摂取することではないことに、私達は気付く時ではないか。自然に寄り添い、様々な生き物の生きる場所を守ることは、私たち人間自身の生きる場所を守ることでもある。自然との調和を重んじる日本の有機農家だからこそ発することの出来るメッセージがあると感じている。お茶を飲むことで繋がる自然や生き物たちに想いを馳せられるように畑からの情報発信を続けていきたい。



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