農業作業息吹/ 109号 | 人と農・自然をつなぐ会





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第109号 2012年10月号

7世代先へ


 残暑の厳しい、とある午後。私は無数の時限装置を田んぼの畦に仕掛けた。10cmほどの穴を掘り、直径5cmほどの球を上下間違えないよう慎重にその穴へ入れ、しっとり柔らかな土で覆う。共犯者は6人と1匹。目撃者は偶然通りかかった知人の女性と近所のおじさん。タイマーは1年後のちょうど今頃、田んぼの畦一面に真っ赤に爆ぜて金色の稲穂と共に風にそよぎ、通りかかった人々の顔にパッと笑みが開くだろうか。あとは、球の中に潜在する時を刻む不思議な力を信じるのみ。どうか無事、根付いて欲しい、そう願いながら。
 彼岸花の鱗茎には毒がありモグラやネズミなど土に穴を掘る小動物から田畑を守る為、畔や土手に人の手によって植えられ、人と共に日本全国に広まったといわれる。その彼岸花が山の上にある茶畑の片隅に二輪寄り添うように現れた。人里離れた山の上で見ることはとても珍しい。「君はどうやってここまで登ってきたの?」心の中で、花に問う。
 里のあちらこちらが赤く染まる光景を前に、これ程までに「人の手」を意識させる花も無いと感じる。田んぼの畦、河原の堤、家の庭先、人の暮らしのすぐ隣に寄り添うように咲く花に、その花を愛で、広め増やした人々の手の温もりと柔らかな心を感じずにはいられない。今を大切にし、更に来年も、その翌年も、子どもや孫にも、さらにその先の子たちへも繋いでいく想いを感じる。
 7世代先の子ども達の為に歩き続ける若者達がいる。7GenerationWalk(セブン・ジェネレーション・ウォーク)といって、今年で4年目となるウォークは3月11日に沖縄を出発し、11月の東京ゴールを目指して歩いている。秋番茶の収穫最終日に7人の若者が我家に到着し、3日間滞在し、農作業を手伝ってくれた。彼らが何を思い、何を求め、何を感じながら歩くのか、彼らと同世代の私にはとても興味があった。代表の山田さんは歩くことを通して大地との結びつきを取り戻すと語っていた。
 戦後の高度経済成長を経て、お金を出せば何でも買う事が出来、学校では教育が受けられ、日々の食べ物に困ることも無い。物質的には豊かになった日本。そんな「幸せ」なはずの日本で、多くの若者達が生きづらさを感じているのは何故だろう。本当の意味での「豊かさ」や「幸せ」について自問し、物質的、金銭的な豊かさが必ずしも精神的な豊かさや幸せとは結びついていないことを肌で感じている。そして、未来を生きる為に、自分たちの子や孫のために、今をどう生きるか、何を残していきたいか考えている。
 その答えは私達一人一人のなかに既に存在している。普段はシンと静まりかえった山々に黄色い歓声と笑いがこだました。大地の上では誰もがいつの間にか最高の笑顔になっている。私は耕すことを通して大地との結びつきを取り戻したい。その想いをどのように形にしていくか、まだまだ長い道のりだ。彼岸花のように少しずつ多くの手で広めていけたら。



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