農業作業息吹/ 145号 | 人と農・自然をつなぐ会





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第145号 2016年2

生きている

 10月に収穫された玄米を1時間半かけて蒸し、それを広げて冷ましながら手で揉むと、湯気をたてながら米粒がパラパラと手の中で踊る。米を揉むことで、表面に傷を付け、そこから麹菌が米の中に入りやすくしてやるため、とても重要な工程。熱さを我慢しながら、徐々に米の温度が下がっていくのを掌で感じる。40℃ほどに冷めたら麹菌をほんの少し振りかけ、よく混ぜる。ここから米を布袋に入れ、電気毛布で覆い保温する。2日目ごろからは自ら発熱を始めるため、今度は温度が上がりすぎないように浅い木箱に広げ、時折扇風機を使って温度を一定に保つ。温度の変化に加え、麹特融の甘い香りが部屋中に立ち込める。その香りを嗅ぐたびに、「今年もこの時期がやってきたな」と身体の奥の方から記憶が呼び覚まされるのを感じる。麹菌が米に繁殖し、米に新しい命が吹き込まれる、この何とも楽しくワクワクするこの瞬間こそ味噌づくりの醍醐味だと思う。
 仕込みから3日目の朝に出来あがった麹は柔らかく煮た大豆と塩と混ぜ、その後大きな木樽で一年以上かけて熟成される。時と共に味が変わっていくのは、味噌の中で麹菌が生き続け活動を続けているから。デンプンは糖化され、タンパク質はアミノ酸などの旨味成分に変わるため、熟成した味噌は甘みと旨味の凝縮した深い味わいになる。その土地の風土や気候をたくみに活かし作り出された味噌等の伝統食品には先人の知恵や工夫が詰まっている。科学など発達していなかった昔から自らの知恵と感性で何とも複雑なこの工程を見つけ、守り伝えた祖先からの恩恵によって現代の私達の豊かな食生活や暮らしがある。
 米、大豆、塩を地下水で仕込む。それだけの原料で味噌ができる。熟成された味噌はファンが多く、昨年仕込んだ1トン近い味噌も夏ごろには完売してしまった。味噌が美味しいと褒められることは嬉しいことである半面、複雑な気持ちになる。私が作っている味噌は昔ながらの技術を受け継いだ天然醸造の味噌だ。しかし巷には味噌とは名ばかりの熟成されていない「味噌」が余りにも多くなった。原料は海外から輸入し、大量生産できるように加温し3カ月ほどの短期間でつくる速醸の味噌は保存料やアミノ酸などの食品添加物が含まれる。味噌のもつコレステロール抑制作用、抗ガン作用、放射性物質の排泄促進作用などの健康効果もこれら偽物の味噌では得られない。
 同じ食べ物でも、一方は生きているのに対し、もう一方は命を持たず腐敗へと向かう。そんなことを考えていた時に、父が話していた卵のことを思い出した。有精卵と無精卵、どちらも見た目は同じ卵だが、一方は命をもって生まれてきたのに対し、もう一方は始めから命がなく時間と共に腐敗へと向かう。私たちは食べるという行為を通して、他の命をいただき自らの命を維持している。これから食べていくうえで、どのようなものを食べたいのか。見た目だけに騙されずに、ものの本質をよく考え選んでいく事が大切だと思う。それが自らの命の輝きに繋がるはず。

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