農業作業息吹/ 161号 | 人と農・自然をつなぐ会





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第161号 2017年11

手の味

  10月初旬、秋番茶の収穫を終え、その後の整枝作業も終えると今年の茶畑での作業はひと段落する。来年の新茶となる芽は二番茶の収穫を終えた後に伸びる夏芽の節に形成される。秋番茶の収穫後も節に形成された冬芽の幼葉は12月上旬頃まで葉数の増加を続ける。この冬芽が来年春に発芽して一番茶となるため、秋番茶の収穫後の整枝は冬芽を傷めないように細心の注意を払って行う。我が家には現在3人の研修生が毎日仕事に来てくれている。彼らと一緒に「ならし機」と呼ばれるバリカンのような刃が付いた整枝用機械の両端を持ち、作業を進める。この時、機械を安定して持つことは大前提として整枝する高さを見極め茶樹の畝間を歩きながらもその位置をキープすることが求められる。まず皆で冬芽の形成の様子や冬の間養分が蓄積される葉層をよく観察してから作業を始める。が、機械を安定して持つということはとても難しいことで、ところどころ大切な冬芽を削ってしまうという箇所も出てくる。その都度、機械を止めて、再度高さの確認と説明をするという繰り返しは、なかなか骨の折れることで整枝作業自体よりも疲れる。私自身の理解もしっかりしていなければ説明できないため、研修生たちに基礎から鍛え上げられている。誰でも最初は上手に出来なかったことが修練を経て技術を習得し、磨きをかけていく。それは茶園管理だけでなく製茶技術やその他のものづくりにも共通すること。そのような人間の手であればこそ作り上げられるものに心惹かれる。
 秋番茶が終わっても一息つく間もなく、田んぼでたわわに実った稲が重そうに頭をもたげ収穫を待っている。スズメたちがその稲を狙って群れている様に焦りを感じつつも、今年の天候不順には本当に泣かされた。長雨の後は台風が立て続けにやってきて、11月をまたいで収穫をようやく終えた。「命めぐる収穫祭」と題し開催した稲刈り交流会へは台風にも関わらず50人ほどが参加してくれた。二日目の朝には前日掛けた稲架が倒れてしまい、雨の中皆が泥んこになりながらも協力し合って直すというハプニングも。それでも文句を言うどころか、楽しかったと目を生き生きと輝かせ2日間を過ごしてくれたことは主催者として何と有り難いことか。今年初めて田植えから参加した小学2年生の女の子は合鴨しめは実際には手を出せなかったけれど、最後までしっかり見て食べる時には「残さず大切に食べてあげようね」とお母さんに話していた。2歳の頃から参加し今年で4年目となる男の子は以前のように親にしがみつくこともなく、お兄さん顔で他の新参者の子ども達に稲刈りを教えたり、合鴨の調理にも初めて包丁を握って最後の一歩手前までやり遂げたとお母さんが嬉しそうに後で報告してくれた。田んぼと共に子どもや大人も成長していく。
我が家の田んぼでは今年から裏山の竹を切り出し全ての田んぼ(と言っても、たかが3反だが)でハサ掛けをすることにした。ちょうどボランティアで滞在中のクロアチア人の青年を含め若い力が6人プラス、今年で74歳になる父が若い衆にハサ掛けの際の竹の組み方や縛り方を丁寧に教えていくというチームワーク。途中、収穫機械の故障があり、1割ほどの稲束が縛られないまま散乱してしまったため、散らばった稲を手で集めて藁で縛るという非効率極まりない二日がかりの稲刈りとなってしまった。二日間も稲を藁で縛っていると手のあちこちが切れ、血がにじむ。昔の人はこうやって稲刈りをしていたのだろうなと思うと感慨深い。機械化や効率化という流れの中で、現代社会はとてもたくさんのものを知らないうちに失ってきたと思う。私は決して機械化を完全否定してこういった非効率なことをやろうと勧めるつもりはないが、そういう時間があっても良いと思う。手を実際に使い、腰を曲げ、一日中畑で汗することで見えてくる景色は全く違ってくる。田んぼに生きる様々な小さい命たちに目をやり、山の向こうに沈んでいく太陽とその光の作り出す陰影の美しさに心奪われ、何より共に作業をする人々の働く姿の美しいこと。手で作業をするということは、周りに目をやる心の余裕のようなものを私たち人間に与えてくれる。稲刈りに集まった大勢が稲刈りという作業だけでなく、田んぼを取り囲む自然の美しさや豊かさに魅せられ、雨であってもそれを楽しむ心や、作業を終えた後の空腹感と食事の美味しさ、そんな単純なことを再度自らの手の中に取り戻すことから日々の食事や暮らし方が少しずつ変わっていくのではないかと期待している。

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