農業作業息吹/ 163号 | 人と農・自然をつなぐ会





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第163号 2018年2

里山に生きる

  このところ、当地でイノシシ、シカ、猿などの被害がとても深刻になっている。茶樹の根元に生えた山芋の根を食べようとイノシシが通路に大きな穴を掘り、それに気づかずに作業をしていると、その落とし穴に足を取られ、不意を突かれる。穴を掘るばかりでなく、猪突猛進とはよく言ったもので、何があろうとお構いなしに一直線に突っ切り茶樹をなぎ倒し、穴を掘った土を茶樹の上に積み上げ、みかん園では電気柵が雑草に触れ漏電した隙をついて入られてしまい、大切に育てた樹の枝がボキボキに折られた。そして田畑では作物を食い荒らす。数を上げればキリがないほど。最近では電気柵無くしては農業がままならない。昨年、環境省が出した報告によると1990年には50万頭ほどであった全国のイノシシ生息数が2015年には304万頭とこの25年で6倍にも急増している。藤枝市内で昨年は3,000頭近くのイノシシが捕獲されたということだが、多産なイノシシの増えるスピードにはなかなか追いつけないようである。これからの時代、山間地で農業を続けていくためには否応なしに、これら獣たちと向き合っていかなければならない。昨年末から狩猟を始めたパートナーが初めて罠でイノシシを獲った後に書いた文を紹介したい。

もし自分が生きるためだけに野生動物を捕えてその肉を食べるのなら、特に違和感はなかったのだと思う。それは太古の昔から人間が行ってきたことだし、自然界ではどの動物もそうしていることだ。だけど、山の猪の場合は少し事情が違う。かつて、山の猪が里に下りてくることはほとんどなかった。山に十分な食糧があり、人間に捕まる危険を侵してまで里へ下りてくる必要がなかった。だけど人間が山の広葉樹を伐採し、建材用に杉や桧などの針葉樹、たけのこ用に孟宗竹ばかりを大量に植えたため、山の樹々は様変わりしてしまった。その結果、山には猪の食糧がなくなってしまった。生きのびるために猪は山から里へ下り、農作物を荒らすようになった。今、里では猪除けの電気柵なしには、農業はできなくなった。里の農家にとっては、畑を荒らす憎き猪を捕まえるしか被害を減らす手立てがない。そうして僕は猟師免許を取って猟を始めた。だけど、実際に猪を捕まえて絶命させるとき、なんとも遣る瀬ない気持ちになった。その遣る瀬なさが何なのか、猪の屍体を乗せた軽トラックを運転しながら考えていた。
もともとは山と里で棲み分けていた猪と人間。人間が山から樹の多様性を奪ったため、猪は里へ下りてくるより仕方がなくなった。すると今度は農作物の被害を減らすために猪を捕まえて殺す。その因果に遣る瀬なさを感じたのだ。
抜本的な解決策は、猟をして猪を減らすことではなく、山の多様性を回復して棲み分けることだと思う。そのためには人間が植えた杉、桧、竹を伐り、広葉樹を植えることだと思う。そしてもし、食糧として猪を捕るのなら、人間の方が山へ入るのが筋だ。その筋は、破ってはならない自然界の掟のように思う。
僕はこれからも猟を続けていこうと思う。自分が里で猪の命を奪うことに遣る瀬なさを感じ、その命に畏敬の念を感じ続けていられる限り。
自分が捕まえた猪を目の前に、人間の深い業を思う

 イノシシの捕獲から解体までを目の当たりにした日、食いしん坊でいつもは何でも食べる息子はこの日は猪肉に全く手を付けなかった。彼の中でどんな考えや感情が渦巻いていたのだろう。彼がもう少し大きくなり、自分を表現する術を身につけたら聞いてみたいと思う。すべての食べ物は、かつては生きていたということ、その命がどんな生き方をし、食べられることで新たな命と生き方につながっていくこと、それを考え、想像できる人に育ってもらいたい。


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