農業作業息吹/第44号 | 人と農・自然をつなぐ会





ibuki.gif

第44号 2007年3

アフリカの大地から

今年は長い秋の後に冬を飛び越して春が来た。例年であれば降霜によって早朝の里は真っ白なベールで覆われるのに今年は霜も少なく、日中の気温が20℃を超えた日もあった。「霜被り」と呼ばれる薄い皮に包まれて冬を越す茶の芽も今年の高温によって冬の到来を知らないまま年の暮れになっても動き続け、刈り均し作業を何度もしなければならなかった。裏山のシイタケは秋から今までずっとニョキニョキと出続けていたし、畑の大根はいつもよりも数週間早く花を咲かせる準備に入り収穫のタイミングを少し誤ってしまった。大根切干も朝の霜と日中の日差しによって、あまく美味しく仕上がるのだが暖冬で、いまいちの出来。異常気象は日本だけでなく世界中で起きている事はニュースで毎日伝わってくる。カリフォルニアのビーチに雪が降ったり、冷害からオレンジ生産が壊滅的であったり、オーストラリアは凄まじい旱魃で米生産の6割、小麦生産の9割の減少だとか。世界的な異常気象は食糧生産に直接的な被害を与えている。
2月の下旬に西アフリカのマリ共和国で「食糧主権フォーラム」が開かれ、参加してきた。世界の80カ国からスタッフをあわせて600人が参加し、1週間の開催期間を通して「食糧主権」について議論した。このフォーラムが他の国際的な会議と大きく違うのは、その運営と実行が農民や漁民、先住民、消費者など今まで国際的な表舞台には見られることのなかった人々の集まりであること。そして其々の立場から農業、食糧、領土、環境、社会などの抱える問題を提起し、世界的な連帯を通して問題を解決しようと乗り出したのだ。
まず、ことの背景を説明すると、今現在のグローバル化の波は世界中の隅々まで浸透している。そして、それに乗って新自由主義経済のもと、大量の農産物貿易は各地の農業形態を大きく変え、自然資源を枯渇させ、地域に根付く伝統・文化を喪失させ、食の安全性も脅かしている。社会的にも人々の貧困と格差は進み、労働条件も悪化する一方だ。例を挙げればきりがないが、農業分野では悲しいことに、農民同士が互いの生産と生活を破壊し合うという矛盾した現象が起きている。例えば、タイの米農家は輸出型の米生産に切替えた結果、米の単一種類の栽培によって多くの在来種を失った。そして地域消費用の米が輸出にまわされ飢餓人口が急増しているという。その米の輸出先である日本の米農家は米価の急激な下落に苦しみ、農民の自殺が増えている。フィリピンで生産されるバナナは大量の農薬を使用してプランテーションで栽培されている。そこで働く労働者は土地も持たない農民達で、彼らは農薬によって自らの健康を害し、更には彼らの間で奇形児の出産が増えている。そのバナナは大量の防虫剤が散布され日本へ船で運ばれ、それを多くの消費者や子供が何も知らずに口にする。外国から輸入される農産物は確かに店頭価格は安いかもしれない、しかしその裏には多額の政府の助成金があり、地域の環境、農業、人々の健康を考慮に入れれば、決して安価とはいえない。
私は今回初めてアフリカを訪れた。アフリカの地図を見るとわかるように直線に引かれた国境を持つ国が多い。長い植民地支配と奴隷制によって地域の伝統文化は奪われ、人々の生活は破壊され、民族は対立関係に置かれた。植民地支配が終わった後には「自由」という仮面を被った大国の干渉を受け、アフリカの富は先進国へと吸い上げられていった。アフリカが貧しいのは彼らの文化が劣っていたからでなく、日本やアメリカ、ヨーロッパ諸国が「豊か」なのは彼らの貧しさの上に今日の私達の生活があるからだと感じた。貧困と飢餓に苦しみながらも、人々は地域で協力し自らの手で自然や文化を守ろうとする姿に未来への光を感じた。
まとまりのない話になってしまったけれど、これら全ての問題の根底には同じ原因が存在する。それは、人々の手から生活や生産の手段が奪われていること。地域の環境、食糧、農業、暮らしを守る主体は、その地に住む人々によってであり、誰かに任せては決して叶わないことだ。自分達の生活や環境を自ら守る「新しい流れ」をつくり出すためには、その主権は人々の手に戻さなければならないこと。お茶に関しても大手飲料メーカーが緑茶ドリンクで茶業界を支配しようとしているが、小さい茶農家と消費者が力をあわせて茶生産と文化を守らなければ。





01.gif

Top-1.gifTop-1.giftop-2.giftop-2.gifTop-3.gifTop-3.gifTop-4.gifTop-4.gifTop-5.gifTop-5.gif

side revision-01.pngside revision-01.png
side revision-02.pngside revision-02.png
side revision-03.pngside revision-03.png
side revision-04.pngside revision-04.png
side revision-05.pngside revision-05.png
side revision-06.pngside revision-06.png



InkedSpring brochure 2020-01_LI.jpg




cha ba sign.png


圧縮2020_04_Tea Journalのコピー_compressed-1.jpg

茶畑便り
第20-2号
2020年4

・・2020_01_Tea Journal表-圧縮済み-1.jpg・・・・

茶畑便り
第20-1号
2020年1月

・・・・・・

20200410112623309-圧縮済み-1.jpg

茶畑便り
第006号
2019年12

・・・・・・


・・・・・・・・・・
お知らせ
29178861_10156432321485992_3005057590182993546_n.jpg
第42回
お茶摘み交流会
2018/4/28(土)・29(日)
詳細

・・・・・・

29178861_10156432321485992_3005057590182993546_n.jpg
42年続く無農薬茶の
歴史と
新茶テイスティングの会
2018/5/27(日)
詳細

・・・・・・


30420296_10156537949345992_4825658733058059627_o.jpg
巡り巡って今年も田植え
(時々アイガモ)交流会
2018/6/10(日)
詳細

・・・・・・

30725979_10156537962245992_6322587080324240031_n.jpg
第18回
紅茶づくり交流会
2018/6/16(土)・17(日)
詳細